
クロソイド曲線
(基本計算、対象型、幅杭計算)
基本計算
自動車を運転している場面を想像してください。直線を走っている状態(ハンドルはまっすぐ)から、一定のカーブ(ハンドルを一定角度切った状態)に入る際、急にハンドルを切ると遠心力が急激に働き、乗り心地が悪く危険です。この時、「一定の速度で走りながら、ハンドルを一定のペースで切り足していく」という動きの軌跡が、クロソイド曲線になります。
対象型
対称型クロソイド曲線は、道路や鉄道などの路線において、直線と単曲線(円曲線)の間に挿入される緩和曲線の一種です。「対称型」とは、曲線の始点側(直進からカーブへ)と終点側(カーブから直進へ)にパラメータ(A)と曲線長(L)が全く同じクロソイド曲線を配置する線形を指します。
この線形は以下の3つの区間で構成されます。
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第1クロソイド(入口): 直線から始まり、曲率半径が無限大(∞)から徐々に小さくなり、円曲線の半径(R)に達するまでの区間。
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円曲線: 一定の曲率半径(R)を持つカーブ区間。
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第2クロソイド(出口): 円曲線から直線へ戻るため、曲率半径がRから無限大へと徐々に大きくなる区間。
運転者のハンドル操作を一定の速度で行えるようにし、遠心力の急激な変化を防ぐことで、安全かつ快適な走行を実現します
杭幅計算
計算の出発点となるKA(クロソイド始点:Klothoid Anfang)から、指定した曲線長 L(No.測点までの距離)における中心線座標を求め、さらにその点での接線方向に対して直角にオフセットした幅杭(左右)の座標を計算します。
基本計算
クロソイド要素から諸要素を計算します。

1. 計算条件
クロソイド曲線を構成・計算するためには、次の3つの基本要素を使用します。通常、設計においてはこれら3つのうち2つの値が与えられ、残り1つを計算で求めます。
R(曲線半径 / 円曲線の半径):
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単位はメートル(m)。
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すりつけが終わったあとの、本カーブの半径です。
L(クロソイド曲線全長):
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単位はメートル(m)。
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直線部から円曲線部に至るまでのクロソイド曲線の実際の道のり(長さ)です。
A(クロソイドパラメーター):
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単位はメートル(m)。
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曲線の「拡大率(スケール)」や「緩やかさ」を表す定数です。
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Aの値が大きいほど、緩やかにカーブがキツくなっていく大きな曲線になります。
2. 基本計算式
3つの要素(R,L,A)には、次の絶対的な基本関係式が成り立ちます。
①基本関係式
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A^2 = R × L
②接線角(クロソイド角)τ
始点(直線)の接線方向に対して、曲線長 L の地点で向いている角度(ラジアン)です。
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τ = L / 2R
※度数法(度分秒)に直す場合は、τ× 180/πを計算します。
③ クロソイドの座標 (X, Y)
クロソイド始点(直線と緩和曲線の接点:KA点)を原点とし、直線の延長方向を X軸、それに直交する方向を Y軸としたときの、曲線長 L の終点(KE点)の座標です。測量計算では、マクローリン展開による級数展開式を用います。
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X = L(1 - L^2/40R^2 + L^4/3456R^4 - …)
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Y = L^2/6R(1 - L^2/56R^2 + L^4/7040R^4 - …)
④シフト(移程) ΔR
クロソイド曲線を挿入するために、本来の円曲線を内側にどれだけズラす(平行移動する)必要があるかを示す値です。
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ΔR = Y - R(1 - cosτ)
※概算式にΔR = L^2/24R が用いられる場合もあります。
⑤ 円中心の X 座標(Xm)
ズラした円曲線の中心から X 軸に下ろした垂線の足の座標です。
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Xm = X - Rsinτ
※概算式にXm = L/2 が用いられる場合もあります。
3. 計算例
※小数点以下の桁数:3桁、丸め処理:四捨五入
クロソイド曲線長(L) = 50m、クロソイド要素(A) = 100m の場合のクロソイド曲線諸要素を計算します。
【入力値】
①クロソイド曲線長(L):50(m)
②クロソイド要素(A):100(m)
【計算結果】
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X座標 (X): 49.922
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Y座標 (Y): 2.081
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接線角 (τ): 7°09′43.101″
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極角 (δ): 2°23′13.230″
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移動量 (ΔR): 0.521
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MのX座標 (Xm): 24.987
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MのY座標 (Ym): 200.521
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短接線長 (Tk): 16.692
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長接線長 (Tl): 33.361
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動径 (S0): 49.965

4. 実務上のポイント
基本パラメータ A(パラメータ)の選定と確認:
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A は曲線の大きさを表す指標です。設計速度に対して適切な A が選定されているか、まずは設計図書との整合性を確認します。
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計算の出発点: 通常、設計データには半径 R と長さ L、あるいは A と L が与えられています。
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計算を開始する前に、これらの数値から導き出される曲率の変化が不自然でないかチェックします。
接線長 (TK) と長弦 (CL) の算出
現場での中心杭設置や丁張設置において、以下の要素は必須です。
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接線長 (TK): 直線部からクロソイド始点(KA点)までの距離や交点(IP)からの引き出し距離を計算します。
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座標展開: 数式上の x, y 座標(クロソイド始点を原点とした接線方向と法線方向)を現場の公共座標系(平面直角座標系)へ変換する計算が実務のメインとなります。
対象型
クロソイド要素と諸要素及び接線長(W)、全接線長(Tc)、円曲線の中心角(α)、円曲線長(Lc)、全曲線長(CL)を計算します。

1. 計算条件
基本入力値は以下の通りです。
交角 (IA):
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2つの直線の交点(IP)における交差角(度分秒)。
基本要素:
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円曲線半径 R、クロソイド曲線長 L、クロソイドパラメーター A のうち、2つの値。
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クロソイドの基本定理 A^2 = R・L により、2つが決まれば残り1つは自動的に定まります。
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実務では (R, A) または、(R, L) が与えられるケースが一般的です。
2. 基本計算式
①基本パラメータの算出 与えられた2つの要素から、残りの要素を求めます
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L = A^2 / R 又は、A = SQRT(R・L)
②クロソイド角 (τ)
クロソイド曲線の始点(KA)から終点(KE)までの接線角の変化量です。
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τ = L / 2R(Rad)
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度数法への換算:τ(度分秒) = τ × 180 / π
③円曲線の中心角 (α) 全体の交角から、両端のクロソイド角を引いた値です。
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α = IA - 2r(度数法またはラジアン)
④移程 (ΔR) と Xm
円曲線を直線側に延長した場合の元の直線とのズレ(シフト量: ΔR)とその接点のKAからのX座標(Xm)です。高精度な近似式、または級数展開を用います。
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Tc = (R + ΔR) tan (IA / 2) + Xm
※厳密には ΔR = y - R(1 - cos τ)
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Lc = R・α(Rad)
※厳密には Xm = x - R sin τ
⑤全接線長 (Tc) と 円曲線長 (Lc)
PI(交点)からKA(始点)またはCE(終点)までの直線距離(全接線長)と中間の円曲線の長さです。
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Tc =(R + ΔR) tan (IA / 2) + Xm
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Lc = R・α(Rad)
⑥全曲線長 (CL)
線形全体の延長です。
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CL = 2L + Lc
※「接線長 (W)」は、クロソイド部分の長接線・短接線を指す場合や、シフト量 ΔR をWと表記するローカルルールが存在します。ここでは標準的な Tc, ΔR の表記を採用しています。
3. 計算例
※小数点以下の桁数:3桁、丸め処理:四捨五入
交角(IA) = 70°、曲線半径(R)= 300m、、クロソイド要素(A) = 200m の場合のクロソイド曲線諸要素を計算します。
【入力値】
①クロソイド曲線長(L):70°0'0"
②クロソイド要素(A):200(m)
【計算結果】
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曲線半径(R):300.000
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クロソイドの全曲線長(L):133.333
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クロソイド要素(A):200.000
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X座標 (X):132.676
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Y座標 (Y):9.842
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接線角 (τ):12°43'56.624"
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極角 (δ):4°14'32.479"
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移動量 (ΔR):2.465
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MのX座標 (Xm):66.557
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MのY座標 (Ym):302.465
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短接線長 (Tk):43.556
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長接線長 (Tl):123.077
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動径 (S0):133.041
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接線長 (W):211.788
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全接線長 (Tc):278.345
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円曲線の中心角 (α):44°32'6.753"
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円曲線長 (Lc):233.186
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全曲線長 (CL):499.852

4. 実務上のポイント
端数処理(丸め誤差):
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公共測量作業規程に準拠する場合、τ や各座標値の算出過程での有効桁数・丸め位置(JIS丸めか四捨五入か)に注意が必要です。
幅杭計算
クロソイド要素(A、R、L)から中心線上の任意測点(No.測点)と左右にオフセットした幅杭の座標を計算します。

1. 計算条件
入力値として以下の条件を定義します。
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始点座標 (KA): (X0, Y0) ※測量座標系(X=北、Y=東)
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方向角 (方位角): α (KAにおける接線方向。北を0°として時計回り)
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曲線方向: 右回り(カーブが右に曲がる)または左回り
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クロソイド要素: パラメータ A、または終点半径 R と 全長 L
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任意測点までの曲線長: L (KAから求めたい測点までの距離)
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オフセット幅: W (中心線から幅杭までの離れ)
2. 基本計算式
クロソイドパラメータと局所座標系の計算は、クロソイド曲線の基本計算と同じです。
①全体座標系(測量座標系)への変換(中心座標)
方向角 α を用いて回転および平行移動を行います。
右回りの場合:
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Xcenter = X0 + x cos α + y sin α
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Ycenter = Y0 + x sin α - y cos α
左回りの場合( y の符号が反転します):
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Xcenter = X0 + x cos α - y sin α
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Ycenter = Y0 + x sin α + y cos α
②幅杭座標の計算
任意測点における接線方向角 θ は、KAの方向角に接線角 τ を加減して求めます。
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右回り: θ = α + τ
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左回り: θ = α - τ
ここから左右へ 90°(直角)方向にオフセット幅 W を加味します。
右幅杭座標:
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Xright = Xcenter + W cos( θ+ 90°)
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Yright = Ycenter + W sin( θ + 90°)
左幅杭座標:
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Xleft = Xleft + W cos( θ- 90°)
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Yleft = Yleft + W sin( θ - 90°)

3. 実務上のポイント
級数展開の打ち切り誤差:
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近年の線形計算では、マクローリン展開の第3〜4項程度まで計算すれば、通常の実務上(ミリ単位)の精度は十分に確保できます。
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ただし、L が A を大きく超えるような極端なクロソイド(実務では稀)の場合は誤差が大きくなります。